- 2026年5月15日
補完食ってなに?
離乳食を始める時期になると、多くの親御さんから「何から食べさせればいいのか」「一生懸命作っても食べてくれない」という切実な相談をいただきます。
これまでの日本の離乳食は、母乳やミルクを減らしながら「食べる練習」をすることに主眼が置かれてきました。しかし、世界保健機関(WHO)が提唱するのは、成長に伴って不足する栄養を文字通り「補う」ための「補完食(ほかんしょく)」という考え方です。
今回は、私がときどきおすすめしている、相川晴先生の本をご紹介します。
1. 『赤ちゃんのための補完食入門』

〜なぜ「補完」が必要なのかを理解する理論編〜
この本は、単なるハウツー本ではありません。「なぜ、生後6ヶ月頃から食事が必要なのか」という根本的な理由を、医学的・栄養学的な視点から非常に分かりやすく解説しています。
- 鉄分・亜鉛・エネルギーへの注目: 生後6ヶ月を過ぎると、赤ちゃんがお腹の中に蓄えてきた鉄分などの貯蔵栄養素が底をつき始めます。本書では、日本の伝統的な「10倍粥(水分が多い食事)」だけでは、必要な栄養素を十分に摂取できない可能性をデータで示しています。
- 「効率的な栄養摂取」の提案: 最初からある程度濃度の高い食事を与えても良いことや、手軽に栄養価を高める工夫など、合理的で納得感のある内容です。
医師の視点から: 根拠が明確であるため、情報の取捨選択に迷っている親御さんの「心の指針」になります。「頑張って裏ごしして薄める」ことよりも「必要な栄養を届ける」ことの大切さに気づかせてくれる一冊です。
2. 『赤ちゃんのための補完食レシピ』
〜診察室で伝えきれない「具体的な工夫」が詰まった実践編〜
理論を理解した後に、では具体的にどう作ればいいのか。その答えがこのレシピ本にあります。
- 「ちょい足し」で変わる栄養価: レバーペーストや粉ミルク、きな粉などを活用し、手間をかけずに鉄分やエネルギー密度を上げる具体的な方法が豊富に紹介されています。
- 親の負担を軽減する知恵: 「手作りしなければ」というプレッシャーを和らげてくれる、市販品の活用術や取り分けのコツが満載です。補完食は、決して「特別な料理」を作る必要はないのだと教えてくれます。
医師の視点から: 栄養バランスを保ちつつ、いかに親御さんの調理負担を減らすか、という点にまで配慮が行き届いています。忙しい毎日の中で、持続可能な食事作りをサポートしてくれる実用的な内容です。
結び:肩の力を抜いて、豊かな食卓を
私が診察の際、最も大切にしてほしいと願っているのは、「赤ちゃんの健やかな成長」と「親御さんの笑顔」の両立です。
「補完食」の考え方を取り入れると、離乳食に対する「こうしなければならない」という固定観念から少し楽になれます。相川晴先生の提案は、ご自身の経験とエビデンスに基づいており、かつ現実的で日々のごはんにもきっと役に立つと思います。
離乳食の進め方に迷いや不安を感じている方は、ぜひ一度手に取ってみてください。院内にもあります!お声がけください。